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甘い蜜は今日もどこかで
第1章 【本当は嫌なのに】
女の子同士なので首筋に顔近づけてクンクンと匂われる。
「ヤバっ、めっちゃ良い匂い、甘いですね」って言われても自分では気が付かなかった。
これって、ヤバかったりする?
今までのクライアントに契約切られたことはないけどこれからはちょっと気をつけようと思った。
直しようもないけど。
戻ってきた男性秘書の方にも話を振っていてこっちがアタフタする。
「え、あ、そうなんですか」とやっぱり勘違いされていて2人して「全然嫌な匂いじゃない」と力説されてしまった。
となると、副社長もそれを感じていたということになるわよね?
え、ジロウも?
その一連があってから何となく副社長の近くに居るのは気が引けてしまう。
なるべく用事は時短で行い、近付いてくるものなら適当に誤魔化し距離を取るように。
あからさま過ぎたかな、と思ったが今までご迷惑を掛けていたかも知れないと思うといたたまれない気持ちになる。
「藤堂さん?俺、何かした?怒ってるの?」
「いえ、何も、ちょっとクシャミしそうですみません、あまり近くに居られない方が」
「空調設備をもっと整えよう」と受話器を取ってしまう。
「え、いや、そこまでは……とにかくまた何かありましたらお呼びください」
逃げるように去ってしまった。
今日はまだあの10秒間ルールは発動していない。
今呼ばれたらどうしよう、でも今まで何も言われてないから大したことではないのかも。
いや、他の人が気付くくらいなんだからよっぽどでは!?
「アハハ、藤堂さん、百面相ですか?色んな顔してる」
フッと横から男性秘書に顔を出され笑われてしまった。
「もしかしてさっきの気にしてます?匂いがどうのってやつ」
めちゃくちゃ図星をつかれコクコクと頷いた。
「アハハ!結構気にしいなんですね、意外だな、仕事ぶりは完璧でもこういうところに弱みがあるとギャップ萌えってやつですね」
「笑いごとじゃないですよ、もう〜」
「安心してください、何ともありませんから」
その一言に安心してこちらも笑みを溢した。
仕事を再開した途端、内線で副社長に呼び出される。
もうちょっとだけ後にしてくれたら助かったんだけどな……なんて思いながら入った瞬間。