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甘い蜜は今日もどこかで
第1章 【本当は嫌なのに】
泣きそうな顔して何言ってんだか。
「ねぇ、特効薬は?」って聞いたら苦笑い。
そんなの私には通用しないよってことまだ教えなくちゃならないの?
「痛み、治まった?」
「は、はい、麻婆豆腐、もう食べれると思います」
「バーカ、ヘタレ、ドジ、本当に男なの?」
「ひ、ひどい…」
あぁ、ムカつく。
バシッと決めろよ。
どこまで意気地がないんだ。
「早く特効薬、頂戴よ」とTシャツ掴んで引き寄せた。
私から唇を重ねたの。
もうとっくに舌は治ってる。
猫舌でもないし。
男気あるかな?て試してみただけ。
引っ掛かったくせにグダグダになるやつ。
火傷したであろう舌を絡ませてくるからビビってんの?
「つ、椿さん!」って離れないで。
「特効薬、コレで合ってた?」
「ぜ、全然違いますから……薬箱に確かあったなって」
「あら、残念、キスで治してくれると期待してたのに」
「何でいつも椿さんはそんなことばっかなんすか」
「なーんだ、私が副社長と楽しそうに仕事してるからジロウやきもち妬いたのかと思った〜」
「えぇ?何でそうなるんすか」
「ふーん」と疑いつつまた食べ始める。
わかった、わかった。
自意識過剰な私で居てあげる。
ヘタレだもんね。
時間かかるな〜これは。
いつまで待てば良いのかな。
顔赤いからバレバレなのにね。
一緒に食べて食器洗ってジロウは帰っていく。
いつものルーティーンみたいなものだけど、玄関まで見送る際に。
「そういや僕、副社長に言ってました」
背を向けたまま突然言うので「え?」と素っ頓狂な声を出してしまった。
「椿さん、あの日、副社長を僕と間違えてキスしそうになってたんで引き離したんですよ」
それは聞いた。
その後の記憶はないけど、副社長もジロウに言われたって言ってたな。
「結局僕じゃなくても椿さんはああやって甘える人が居れば良いんだなって思ったらムカついてきて」
うんうん……………え?
「胸クソ悪くて言っちゃいました……僕のなんでって」
「え?それって………」
「明日、また迎えに来ます!」
「待って…っ」