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甘い蜜は今日もどこかで
第2章 【曖昧なカンケイ】





この絡める指も見つめ合う視線も。
「ゆずくん」と呼ぶ声も笑顔も全部、偽物なんだよ。
与えられた時間の中で精一杯夢を与えているの。
時々悲しくなるよ。
私、何やってるんだろうって。
ココロが擦り減っていく感じに近い。




イルミネーションを見ながら手を繋いで歩く。
計3時間の夜のデートコース。
刻一刻とお別れの時間が迫ってくる。
まだもう少し一緒に居たいと思わせるのもテクのうち。




「アキちゃん、今日もありがとう、凄く楽しかった、時間経つの忘れちゃうくらい今日はアキちゃんで頭の中いっぱいになったよ」




「楽しかったね、あっという間だった、来月楽しみにしてるね」




帰りはいつも電車でお別れ。
改札まで見送ってバイバイする。
ほんの少し前より距離が縮まったと期待させて、手を離すのがちょっと名残惜しくて焦れったさも演出したりして。




わかってる。
終わりの時間が近付いたらすぐ近くでジロウが待機してる。
車の中から見てるかな。
なかなかバイバイしないから変だなって思ってる?
手を離そうとしないのは黒本さんも……だから。




「もう俺、アキちゃんじゃないとダメみたい」




ほら、キタ。
引き返せないところまで。




「わかってるんだ、アキちゃんが他のクライアントともデートしてることくらい……これはアキちゃんにとってお仕事なんだってちゃんと俺、言い聞かせてるから」




自分で魔法解こうとしてるんだね。
危ない橋を渡るにはリスクだらけだ。
言葉とは裏腹に今にも泣きそうな顔で訴えてくる。




「でも誕生日は一緒に過ごせるってわかっただけで大満足だから…っ」




声、上擦っちゃって泣かせてるみたいになってるけどちゃんと聞くよ、全部。




「ごめんね、扱いにくいクライアントで……女性に慣れるどころか、もうどんどんアキちゃんに惹かれてて……あ、ごめん、こんなこと言われてキモいって思うよね、なんか、胸がいっぱいで……ちょっとテンション可笑しいから多目に見てやってください…」




「あ、敬語に戻っちゃった」




「あっ………ごめん、自分から言い出したことなのに」




なかなか離れない手を両手でギュッと握って頬に擦り寄せた。









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