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甘い蜜は今日もどこかで
第2章 【曖昧なカンケイ】
デートのプロがこのザマだ。
プライベートはまるでダメなんてね。
そのうち干からびちゃうよ。
責任取ってよね、ジロウ。
(英会話で会議中)
こうやって見てると副社長も良い男なのに、裏ではあのザマだもんね。
誰も知らない顔なんだろうな。
こんな澄ました顔して流暢な英語を喋っているけれど、恋愛はまるでダメダメ。
隣でカタカタと翻訳しながら議事録作成している私も恋愛は実はダメ人間なんてウケる。
何が“女性との距離感を教える”よ。
私もジロウとは全然そんな関係になれていないのに。
「藤堂さん!」
近くで大きな声がして肩を上げてビクッとした。
「会議、終わったけど」と副社長に言われ見渡すとガランとした会議室。
いつの間に!?
仕事には差し支えのないようにしますって言った矢先にコレは痛い。
「途中辺りから心ここに在らずって感じだったのに翻訳はバッチリだな、抜け目ないところは認めるがあまり無理はするなよ、何事も身体が資本だ、倒れられたら本末転倒だからな」
「はい、申し訳ありません」
「謝らなくていいから、その……笑って?」
「え…?」
「藤堂さんが笑顔だと何ていうか……落ち着くから」
朝からこの人は何を言っているんだろう。
どの少女漫画をお読みになったのかしら。
まるでどこからか切り取ってきたようなセリフ。
言っときますけどそういう寒いセリフ、イケメンに限られて許されることですからね!
まぁ、副社長はどちらかというと、
“イケメン”に属するわね、どう見ても。
なら良いのか?いや、好みだろう。
「そう言われるとなかなか笑えませんよ、でも気をつけます、眉間にシワがいかないように」
そう言って少し笑ったらパソコン抱えて「うん、それそれ!」ってご機嫌になられた。
今度は単純……バカ?
いや、クライアントに失礼だわ。
仕事に集中しなければ。
アポを取り次ぎ目まぐるしい一日。
笑顔を第一に心掛けて副社長の周りを行ったり来たり。
視察同行もニ件こなした。
ナンバー2といえど、体力勝負だ。
やっとゆっくり出来る頃にはもう夕方。
今週はとにかく忙しい。