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甘い蜜は今日もどこかで
第2章 【曖昧なカンケイ】





「ごめっ……ごめんね……弱くてごめん」




「もう良いから……全部出して……受け止めるから」




初めて副社長に敬語を使わなかった。
それくらい私も溢れていた。
此処でしか見せない姿を守り抜く思いと、どう名付ければ良いのかわからない感情と。




「好きな人の前で泣きたくないのに……もうダメだ、止まらないよ……格好悪いから一人にしてよ、藤堂さん」




「ダメ、一緒に居る、あなたを今一人にしたら何するかわかんないから」




「それってどういうこと?大丈夫、これ以上ダメなとこ見せたくないんだよ」




身体を引いてぐちゃぐちゃの顔と対面する。




「何がダメなの?気丈に振る舞ってたよ?泣いてる人に笑いかけたりして、そんなの弱い人間が出来ることじゃないの、色んな人見てきた私が言うんだから全然ダメな人じゃないよ」




ハンカチで顔を拭いてあげた。
「き、汚いから」って言うけど拭いた。
濡れた睫毛が瞬きしてる。
「敬語じゃない藤堂さん新鮮」と力なく笑った。
突っ込んで欲しくてわざとしたのに。




ギュッと抱き締めたのはその笑顔が儚く感じたから。
今にも消えてしまうんじゃないかって思ったから。




「藤堂さん…?」




「どんな言葉が一番良いのかわかりません……ただ、泣いてる背中じゃなくて顔を見て今抱えてるものを共有出来たらな…って思いました、失礼があったならごめんなさい」




「ううん、嬉しい……藤堂さんにそう言ってもらえるだけで活力になるよ」




ううん、何も出来ない。
こうして傍に居ることも正解だとは思わない。
でも身体が、心がそうしてる。
きっと、何度同じ場面が来ても、私は副社長を抱き締めているのだろう。
一人にさせられない、と。




「良いのか?自分を好きだと言った男にこんなことして……誂ってるの?すぐに告白の返事が聞きたくなる……」




「あ、えっと………」




思わず身体を離してみたけれど、手を取られて頬擦りされた。




「嬉しかった、今日葬儀来てくれてて……終わったらやっぱり藤堂さんの顔が見たくて仕方なかった」




また声を詰まらせて赤い目を潤わせている。









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