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甘い蜜は今日もどこかで
第2章 【曖昧なカンケイ】
「ねぇ、困らせたくないんだ、藤堂さん……何とも思ってないんなら、こんなことするなよ、期待するだろ、俺バカだからさ、恋愛においては特に」
自然と指先は溢れる涙を拭う。
間に合わないくらいポタポタと頬を濡らすから、その涙を止めてあげたくて。
こんなの、私自身が理解出来てないの。
説明つかないよ。
きっと吊り橋効果か何かに決まってる。
でももうどの道手遅れ。
勝手に身体が動いてしまう。
「じゃ、私も困らせてあげる」
直前でそんなことを言った気がする。
頬を包み込んで私から唇を重ねていた。
触れてしまえば張り巡らせていた境界線などもろとも崩れていく。
何やってんだろう、私………自ら違反を犯して、舌絡ませて。
「ハァ……ハァ………クビですね、私」
「クビなんかじゃない、俺がさせない」
再び絡み合う唾液の混ざる音。
止まれない……ダメだとわかりながら欲しくなる。
クスッと笑って真っ直ぐ目が合って。
「じゃ、一緒にルール破ってください」と再び唇を重ね合わせた。
慰めてる訳じゃない。
本能に抗えなかっただけ。
「もう敬語に戻ってる……」
「ダメですか?」
「貴重だから……その、めちゃくちゃグッときます」
「んふふ、副社長が敬語になってるじゃないですか」
「ドキッとした、いつもの藤堂さんじゃないから」
「副社長もいつもの副社長じゃありませんよ?」
「今のは格好悪いから忘れて」
「忘れて良いんですか?2人で違反を犯したことも…?」
そう煽ると腰からグッと引き寄せられ鼻の頭がくっつくほど距離が縮んで。
「忘れないよ、藤堂さんの唇……凄く柔らかい……もう一度したい……ダメ?」
「こういう時は聞かなくて良い……身体が勝手に動いちゃうものでしょ?」
それらしい言い訳や御託を並べて心を麻痺させる。
仕方なかったの、抗えなかったの……と後悔なんてずっと後にしちゃえば良い。
今だけはこの人に全てを委ねる………
そう決めたの。
何度も角度を変えて貪り合う。
喪服スーツの上から胸を弄ってきた。
焦らないで……まだキスの時間よ。
もっと舌出して……唾ちょうだい。
バサッと上着を脱いだ副社長。
ネクタイは外してあげる。