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甘い蜜は今日もどこかで
第2章 【曖昧なカンケイ】
「もう俺の我儘でも何でも良いから……」と最後にまたキスを許して指も舌も絡ませ合った。
「本当もう無理…っ」と押し退ける。
でも目が合ったら、また。
ジロウに誤魔化せるギリギリの時間まで求め合った。
「好きだ……藤堂さん、好きだ」
そう囁きながら何度も舌を入れてくる。
「もうダメ……」
やっとの思いで断ち切った。
「ゆっくり休んでください……ちゃんと復活するの待ってますから」
「うん、藤堂さんが居れば何も怖くないよ」
もう何を言ってもこうなっちゃったものは直せない。
自分で蒔いた種なのだ。
「それ、最高の褒め言葉ですね」と笑った。
会社、クビになっちゃうかな。
吉原さんに怒られちゃうよね。
スペシャリストとしてまだ未熟だった。
私情を挟んでしまい禁忌を侵した。
あってはならないこと。
でも、今話したとしてもそれは自己満足であってクライアントに迷惑かけちゃう。
この契約期間だけは責任持ってやり遂げなければならないよね。
この仕事が終われば辞表を出そう、そう決意した。
会社前に停まっていたジロウの車に乗り込む。
「お疲れさまです、椿さん」
「うん、ごめんね、待たせちゃって」
「いえ、何かありました?」
「ううん、何も、葬儀終わって一段落着いてちょっと疲れたかも」
「じゃ、真っ直ぐ自宅向かいますね」
「うん……」
窓の外を眺めて、ジロウの視線から逃れた。
何となく、見れない。
じゃれ合うことも、好き好きビームも出してこない私を変に思ったかな。
こちとら余裕ないのよ。
禁忌を侵して始末書を脳内でまとめてる。
「椿さん」
マンションの入口で呼び止められた。
バイバイしたはずのジロウが車から降りてきてる。
「副社長と何かあったんじゃないですか?少し様子が変なので」
「何でもないよ、ちょっと疲れただけ、明日には復活してるから、引きずらない私の性格誰より知ってるでしょ?」
「気付いてます?椿さんから男の香水プンプン匂ってますよ?いつからそんなに誤魔化すの下手になったんですか」
「どうしたの?ジロウらしくもない、私にそんな興味あったっけ?ジロウだから疲れた顔も見せてるんだけどな」