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甘い蜜は今日もどこかで
第3章 【どんなに焦がれても】
「はい、おやすみなさい……あ、パンケーキ……バターもハチミツありますから」
「うん、ありがとう、じゃ、また明日」
最後、一瞬だけ目を合わせたら動けなくなった。
逸らせなくなった、と言った方が正しい。
なんて顔で見てるのよ。
「なに?」って聞くだけなのにそれさえ出来なくなる。
「風邪、ひかないようにしてくださいね」
「わかった」
「あの……えっと……その、僕に言い忘れてることとかありません?」
「え?うーん……あったかな?いや、ないと思うけど」
「あと………し忘れてることとか」
その一言でピンとくる私も私よね。
自分からは言えないし、出来ないから。
そっか、全部、私が勝手にすることだから。
「ん〜ないと思うんだけどなぁ〜」と近付いてジロウの手を自分の背中に回させた。
抱き着いてる感じで見る見るうちに顔が真っ赤になっていくジロウは「椿さん!?」って声が上擦っている。
「え、なに?ウケる、こうして欲しかったんでしょ?ジロウ」
「ち、違いますよ、近いです、もう僕帰るんで…っ」
「し忘れてたこと、思い出した」
「え?」
聞き分けなくて我儘で自由気ままなキャスト演じてあげる。
困り果ててください。
こんなキャスト初めてだって手を焼いて。
離さないよ、ジロウだけは。
首の後ろに手を回して踵を上げた。
戸惑うフリして待ってたんでしょ?
私からのキスがなかったら……そんなに不安?
「ダメ……です、椿さん…っ」
「ん………ちょっと黙って」
抵抗するくせに舌絡めたら力抜けてる。
あまり煽らないで。
唇離れた途端、物足りなさそうな顔。
し忘れてたこと、キスで合ってた?
「そんな顔してたら本気で襲っちゃうよ?煽ってるって自覚ある?」
「へ……!?あ、すみません」
真面目に謝ってくるし、プッと吹き出したら耳まで真っ赤にしてる。
さっきとは打って変わって満足気に「帰ります」って、またひとつ掌で転がされた。
本当、ジロウにはとことん弱い私だ。