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甘い蜜は今日もどこかで
第4章 【届かない想い】
たまにジロウはわかってるのかわかってないのか、弱みにつけこむところがあるから。
前までは私もそれを利用していたけど、今日は危険指数が高い。
流れる窓の外を朧気に眺めていた。
「椿さん、珍しく疲れてます?」
「ん………そうね、人が多過ぎてちょっと疲れたかも」
「部屋まで送ります」
「え?良いよ、そこまでしなくてもちゃんと帰れるよ」
「僕が心配なんで」
「あぁ、そう、寝るわ、着いたら起こして」
どうしたの?食い下がらない。
寝たフリして会話をシャットダウンするしかないじゃない。
次第にウトウトして本当に寝落ちしてしまった。
「椿さん」と呼ぶ声でハッとして飛び起きる。
マンションに着いていたが駐車場に停まっている。
やっぱり着いてくるつもりだ。
手を添えて降ろしてくれる。
「掴まってください」と腕を出され戸惑うも、いつもの私なら組むだろうなと思って腕を組んだ。
寄り添いながらゆっくり歩いてくれるジロウに「ありがとう」って自然と溢れる。
部屋の前まで来て鍵を開けたら
「ちゃんと着きました、またね、おやすみ」と言うだけ言ってドアを開ければ後ろから一緒に入ってくる。
やっぱりね。
「ちょっ……ジロウ、今日はもう大丈夫だから」
追い返そうとしたのに玄関先で抱き締めてくるのはジロウらしからぬ行動力で驚きが先に立ってしまう。
「ごめんなさい………今だけ……少しだけ……このまま」
返さなきゃいけない衣装だし早めに脱がないと。
飲んでもないくせにどうしたの…?
「ジロウ……離して」
「あ、ごめんなさい」
やっと離れて胸の鼓動が伝わってないかハラハラする。
電気もつけないで真っ暗だからつけようとしたら「つけないで」って言ってくる。
背を向けていた私の肩に頭を乗せてきた。
「ジロウ…?どうしたの…?」
「すみません、すぐ終わりますから」
ヤバい、ドキドキがバレちゃう。
煩いくらい鳴ってる。
わざと電気をつけた。
振り返った瞬間、つけたことに後悔するハメに。
ホテルの制服が目に入って逸らしちゃう。