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甘い蜜は今日もどこかで
第4章 【届かない想い】
その甘え口調になるのやめて欲しい。
強く出れないし、今は自分でもわかるほど心が危うい。
「本当、何なんですか……もう」
__ハァ~今すぐ抱き締めたいって思うのは俺だけ?
「飲み過ぎですよ、範疇越えてます」
__実は結構前から烏龍茶に代えてます
「そ、そうなんですね……」
__好きだよ、椿………今はまだ返事聞かないけど、それだけは絶対にブレないから俺の気持ちは常に椿に向いてるんだってこと、忘れないでいて欲しい
「…………わかりました」
__うん、じゃ、もうそろそろ寝ようか、おやすみ
わかった、としか言えなかった。
期待させるのも今ここで返事をするのも違う気がしてなんとも言えない顔をしてしまう。
椿から切って…と言われて、おやすみなさいって言ってから切った。
結局、電話の件も有耶無耶になったし何ひとつ解決していないけど。
心の隙間に入り込んできたこの温かいモノが何なのか、私は知っている。
「はぁ…………ヤバいな」
ゴロンと寝転んで天井を見つめては溜め息ばかりの夜を過ごすことになった。
「藤堂さん、明後日の役員会議の資料に訂正箇所あって……ここなんだけど」
秘書課の室長と軽く打ち合わせをしたり、たまたま時間が合ってランチをご一緒したりしていると、何となく周りからの視線が痛い。
ええ、わかってますよ。
室長がご結婚されているのは。
もしかして私が色目を使ってるとでも言いたいのかしら。
「最近どうしたんですか?室長と何て呼ばれてるか知ってます?」と同じ秘書課の先輩に声を掛けられた。
何もかも偶然でご一緒してるだけなのに、しかも会話は全部仕事のことですよ。
ミーティングすら人目を気にしなければならないなんてドッと疲れる。
「美男美女、顔面偏差値が凄い、#理想のカップル等々……ありがとう、秘書課を盛り上げてくれて」
「えっ…!?」
「2人が歩いてるだけでオフィス内が潤うらしいから」ってちょっと待って、そんなこと陰で言われてたの!?
ちょうど一段落終えて帰ってきた室長と目が合って。