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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第4章 Valet & Earl 〜従者と伯爵〜
それから一ヶ月は慌ただしく過ぎていった。
日本への帰国準備は驚くほどに大掛かりで、マレーの指示のもと、狭霧は懸命に支度を手伝った。
伯爵は愛娘梨央への山のような土産の数々を用意していた。
フランスレースの愛らしいドレスの数々、薔薇の花を模したような繊細な帽子、可愛らしい赤い革靴、マルセイユの高級石鹸、ゲランの香水瓶、華やかなアンティークドールの数々、玩具や絵本、そして、チョコレートやマカロン、キャンディボンボン…。
それらだけで小部屋は一杯になった。
…その心尽しの品々を見るたびに、狭霧は伯爵の梨央への寵愛ぶりをひしひしと感じた。

執事のマレーは伯爵が日本に帰国中は、英国のヨークにあるカントリーハウスに移るという。
「…英国…ですか?」
不思議そうな狭霧にマレーは支度の手を休めずに、厳しい横貌を見せたままだ。
「君は知らないと思うが、私は英国人なのだよ」
「…え?」
…フランス人じゃ、なかったのか…。
余りに流暢なフランス語だったから気づかなかった。

「そして、今でも私の執事の所属はヨークのカントリーハウスにあるのだ。
こちらには、旦那様の転勤に伴い移ってきたのだ」
「…はあ…」

ピンと来ない狭霧に、マレーは淡々と説明をした。
「…元々旦那様の曾祖父の代から、ヨークには北白川伯爵家のカントリーハウスがあるのだよ」

マレーは漸く支度の手を止めると、窓の外に広がるブーローニュの森を見遣った。
…そうして、幾分柔らかくなった声で告げた。
「…旦那様の曾祖父の方は、英国留学中にとある娘と恋に落ち、結ばれたのだよ…」

「へ⁈」

厳めしく禁欲の固まりのようなマレーの口から流れた「恋」の言葉に、狭霧は驚いた。



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