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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第4章 Valet & Earl 〜従者と伯爵〜
狭霧はそっと従者の控室を抜け出した。
…なんとなく、このまま北白川伯爵の恋の話などを聞かされたくはなかったのだ。
訳の分からない理不尽な感情に支配されそうで…。
なぜだかは、自分でもよく分からないけれど…。

狭霧はそのまま、来客たちが集まる大広間に向かった。
入り口までなら出入り自由だと聞いていたからだ。
吹き抜けの、それこそここで舞踏会が開けそうな重厚な玄関ホールを抜け、賑やかな笑い声や話し声が漏れてくる大広間の入り口に差し掛かる手前…大階段の下、薄暗い階段室の壁から、その聞き覚えのある声は密やかに聞こえてきたのだ。

狭霧は脚を止めた。
…この声は…もしかして…。

眉を顰めながら、狭霧はゆっくりと階段室に向かった。






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