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おせっせのお作法
第1章 私の方が強い
「どうしたの?」
 振り返って彼が聞く。優しくのん気な彼の声はいつも私をほっとさせる。
「ううん、なんでもないよ」
 そういえば彼がにこっと笑って、テレビ画面に視線を戻した。
 性欲がなくなればいいと度々思う。
 くっつくだけで、抱きしめ合うだけで満足できればとよく思う。もしくは、誘うことになんの抵抗もなくて、自分の気持ちを素直にいえればと思う。
 だけどそれができないから、私は今、彼に誘われるのを待っていて、自分から少しでもそういう雰囲気にもっていけやしないかと頭を悩ませている。
 くっついたりキスをしたりしたら、そういう雰囲気に持ち込めるかな?
 しようっていうのが手っ取り早いのは分かっているけど……。
 昨日の段階で、明日イチャイチャしたいなとかいっておけばよかったのかな。
 でも、そうやってあらかじめ決めてするもんでもないやろっていってた男友達がいたっけ。
 そんなことを考えれば考える程正解が分からなくなる。誘い方も人それぞれ。
 彼に対する誘い方で一番いい方法ってなんなの?
 モヤモヤと巡る疑問に出た答えは、結局私は彼に動いて欲しい、誘って欲しいということだった。
 それもできれば前もって。
 人に期待するから裏切られたときに、イライラしたり、ガッカリするのは分かっているけれど、求められることで私は安心したいんだ。
 彼にはあらかじめセックスする日を決めておいてもらおう。
 セックスをするって決まっている日を指折り待つ時間は私に安心と、幸せをもたらしてくれるに違いない。
 そんな結論に至っていると、いつの間にか彼はテレビゲームをやめてしまっていた。
「ゆりもおいで」
 立ち上がると私の手を取ってベッドに移動する。

 ベッドに寝転がると、ぎゅーっと抱きしめられた。
 彼の唇がおでこに優しく触れる。それだけで満足そうに彼は目をつむってしまう。
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