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彼女はただ満たされたい
第1章 元カノは今日も中に招く
「明日休みだよね? 今日来てもちろん泊っていくでしょ?」
 これが彼女からのメッセージであれば嬉しいことこの上ないのだが、元カノからとなれば出るのはため息ばかりだった。
 もうやめなければ、行かない方がいい、断れ。
 そう自分にいい聞かそうとするのに、ゆりに対する未練が結局勝ってしまって、俺は今日もゆりのアパートの前に来ていた。
 もうすぐゆりと別れて1年が経とうとしている。週末に泊るようになってからは半年近く。
 何度復縁を迫ってもゆりは絶対に首を縦には振らない。
 ゆりには好きな男がいて、そいつと付き合っていたからだ。

 どうしてこんなことになってしまったんだろうと思い返してみても、気がつけばこうなっていたとしか思えない。
 付き合っていた頃、人並みに喧嘩もあったが、それ以上に愛し合い身体の相性だってよかった。
 このまま一生一緒に過ごせるだろう。時期がくればプロポーズをして、一緒に暮らし、子どもを育て、老後はのんびり旅行でも楽しむ。
 そんな平凡で幸せな未来予想図を、付き合ってもうすぐ3年を迎えるというところで、ゆりはいとも簡単に破りさった。
「好きな人ができたの。あなたのことを嫌いになったわけじゃないけど、別れましょう」
 いつものデートの別れ際、また今度の代わりに告げられた言葉を理解する前に、ゆりは俺をその場に残して颯爽と帰っていった。
 家にどうやって帰ったのかは覚えていない。それでも家に帰り着いた頃に振られたのだと理解した。
 俺たちの3年がこんなに簡単に終わってたまるかと、電話やメッセージを送ったりしたが待てども返事はなく、家に押しかけるとか無理にでも会う方法も無くはなかったが、そうすれば終わったことを認めなければいけなくなりそうで、ずっとゆりから連絡を待っていた。
「週末空いてる? 家に来て欲しいんだけど」
 半年程待ってから来たメッセージがあまりにも何事もなかったような調子だったので、俺は全てが悪い夢だった、ずっとゆりとの関係は続いていたと思い込もうとした。
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