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密会
第1章 🌹April🌹
「人の上に立つ人間になりなさい。」
教師として働く父によく言われてきた言葉だ。
私の家は、早くに病気で母が亡くなり、父子家庭で育った。
父は再婚はしなかった。
そして、どんなに忙しくても私と話す時間を作ってくれた。
「将来は安定した公務員や教師、それか銀行員になりなさい。」
「...はい、お父さん。」
本当は他にやりたい仕事があったけど、お父さんを失望させる事はしたくなかった。
勉強は嫌いじゃないし、人に教えるのもまあまあ出来る。
そんな理由から、私は教員免許を獲得して私立高校の教師になった。
がむしゃらに教師として4年間働いた。
その中で、勿論恋人も作ったが、長くは続かなかった。
多忙だったというのも理由があるが、1番の理由はセックスへの不満だった。
恥ずかしいが、人よりも性欲が強い自覚があるし、
その上、一般女性が嫌がりそうなハードなSMをしたいと思っていた。
付き合った男性は2人。
どちらも特別顔がいいわけではないけど、真面目で素直で、優しい人だった。
月2回のペースで会って、映画館で映画を観て、レストランで美味しいディナーを食べて、ホテルに行ってセックスをして宿泊する。
激しいセックスをしてくれる訳ではなかったが、壊物を扱うようなセックスをしてくれた。
愛情を感じなかったわけではない。
むしろ充分すぎるほどの愛情は感じた。
それにも関わらず、どうしてもセックスの最中に他の男に抱かれたい等と思う不謹慎な感情を抱く自分に心底辟易したのが理由だ。
縛られたいとか、
鞭で叩かれたいとか
そんな恥ずかしい台詞を言って、
気持ち悪いと思われるのが嫌だったし、何より自分の性癖に彼らを付き合わせるのが申し訳なかった。
そんな馬鹿みたいな理由で
「ごめんなさい。別れて下さい。」と言うのも心苦しかったから、今では恋人を作るのをやめている。
結婚...出来るのかなと一抹の不安に襲われながら、仕事に打ち込む日々を過ごす。
それがこれからも、私の当たり前の日常になっていくはずだった。