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密会
第11章 🌹March🌹(終章)-2


だが、そのバイブは宙を舞って、ベッドから転がり落ちていく。日比谷教頭が再びベッドに乗り上げ、彼女の手にあった玩具を叩き落としたのだ。


“なんだ?とうとう狂ったか?”


心底馬鹿にしたような彼の台詞が美月の脳裏を掠めた。だが実際の所、彼は切羽詰まった顔でベッドに乗り上げ、無言で彼女の上に覆い被さっただけだった。



「壊して、私の事壊して。」



美月は目を瞑り唇を噛み締めながら、日比谷教頭に懇願した。

彼の許可なく他の男に身体を許した私を、
故意ではない嘘だったにしても、結果的に彼を侮辱してしまった私を、許してくれとは言わない。
役目の終わった、貴方にとって何の価値も無い私を気が済むまで弄べばいい。
そうして屑籠に入れたプラスチックのコップのように、私を捨ててしまえばいい。
でも捨てるなら、私のボロボロになった心の理性を剥がしてほしい。
そして、ただの快楽を享受するしか脳のない人形へと変えてほしい。
そのぐらいは望んでもいいでしょう、黎一さん。


本当はそう彼に伝えたかった言葉の数々を無理矢理呑み込みながら、彼女は再度「壊して。」と啜り泣く。


「美月。」


再び、彼の切羽詰まった声が聞こえた。だが美月はギュッと両目を瞑っていた為、その表情を見る事は無かった。
激怒か嘲笑か無表情か、そのどれかだろうと思い込んだのだ。


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