この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
密会
第12章 🌹March🌹(終章)-3

「死ぬ程、その指輪が欲しかったのか?」
しんと静まり返った室内にポツリと彼の声が響く。
それは湖に広がる波紋のようだった。
「欲しかった。欲しくてたまらなかった。貴方が...貴方が私との子供を喉から手が出る程欲しがったように、私も欲しかったの。ずっと...ずっと言えなかっただけ。」
一言一言を噛み締めるように口に出す美月は、彼の目を見据えた。
「まだ何も終わってなんかないの。私から目を背けないで。ちゃんと真っ直ぐ見て。貴方が好きだって、下手な告白しか出来ない私の声を..最後まで聞いて。」
少しでも彼の心に響けばいい。
拙い言葉でそう言い切ると、美月は彼からの言葉を待った。
すると伏せられていた彼の双眼がゆっくり美月に向けらていく。
眉間に皺を寄せ、唇を噛み締めた彼の苦しい表情が露わになる。
その表情を取り繕う余裕もないのだろう。
彼はリングケースをしっかり抱えたままの美月の元へ足早に近づくと、彼女の骨が軋むほど抱きしめる。

