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密会
第1章 🌹April🌹
「妻は居ないが、結婚を視野に入れた恋人は居る。」
微睡の中から目覚めた私は、風呂を済ませてバスローブを着込んだ日比谷教頭に、今更ながら、私達の関係性を問い質した。
結果は予想通り、所謂「愛人」という割り切った関係だった。
「君とは初めて寝たが、身体の相性も良さそうだ。今後もこの関係性も維持しつつ、君も私も楽しめばいい。」
数枚入った諭吉を封筒ごと渡しながら、下衆な言葉を吐き捨てる彼に、私は顔を顰めた。
「..........。ちょっと、ちょっと待って下さい。
今後もって...また、会うんですか?」
「そうだが?たった1度で終わると思ったのか?
マヌケが。」
彼は鼻で笑いながら、すっかり勘違いしていた私に対して、今後は月1程度で同様に密会し、彼を性的に喜ばせる事が私のすべき事だと淡々とした口調で伝えた。
教師の立場を失うわけにはいかない為、聞き入れるしか出来ないが、この密会を乗り切れれば良いと思っていた矢先のこの展開で、私の心は騒然となった。
汚い金を受け取って、ホテルの前で別れた私は、一人暮らしの自宅に直行するとベッドに身体を預ける。
怖い。怖くて逆らえない。
だけど、一番怖いのは、
それが快感であるかのように
上手く翻弄する彼の行為だ。
「厳格」という仮面を被った彼の、もう1つの裏の顔を知った私。
精神を落ち着かせる為に、枕を胸にギュッと抱き寄せたが、気休めでしかなかった。
これから私、どうなってしまうんだろう。
...って駄目駄目。考えても仕方ない事なのに。
明日の授業の事等、他の事に想いを巡らすが、つい彼との情事が脳中をよぎると、不安は募っていく一方だった。