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密会
第5章 🌹August-2🌹
1階、吹き抜けのある開放的なリビングルームを通り過ぎ、螺旋階段を上がって2階、彼の寝室に通され、思わず私は息を呑んだ。
ダークグレーをベースにした広々とした寝室に、パソコンデスクを置いて書斎スペースを設けてあるその部屋は十分寝室兼書斎と言っても過言ではない。
デスク隣には小難しい本が収納された白いシェルフが置かれ、ハイバックのワークチェアと黒のパソコンデスクが重厚な佇まいを見せていた。
「気に入ったか?」
「ええ...とても。夢で出てきた部屋と雰囲気が凄く似てて、ビックリです。」
「ならいい。アレを寄越せ。」
私の目の前に手の平を見せて、せがんできた彼の言葉を瞬時に理解した私は、
肩にかけていたスクールバッグを下ろし、中から茶封筒を取り出すと、「...どうぞ。」と言った後、おずおずと手渡した。
中から紙を取り出して、文章を目で追っていく彼の口角が次第に片側だけ上がっていく。
まずい...また質問攻めかもしれない。
ドキドキと鼓動が速くなっていくのを感じながら待っていると、読み終えたのか、紙と封筒を私の前に突き出してきた為、急いでその2つをスクールバッグの中にしまった。
「大体は把握した。私がこの教師の役を演じるのは容易い事だが、一つ気掛かりな事がある。」
「...な、何でしょう?」
「容姿は申し分ないが、この生意気な小娘の役を演じるお前が想像出来ない。」
「...え」
「そんなに驚く事か?この女とお前の性格は対照的だろう。出来るのか?」
「...昨日、鏡の前で何回か練習はしたので...大丈夫かと。」
「本当か?先程から物欲しそうな目で私を見ているが…淫らに教師を誘う女子生徒の方が適任なんじゃないか?」
「よ、余計なお世話です!」
そう言ってキリっと彼を睨みつけたが、実際のところ彼に図星を指されて、心臓がドクドクと脈を打った。
「お前の為に配慮してやったまでだが...まあいい...精々頑張れ。」
余裕綽々な笑みでそう締めくくった彼は、ベッドから腰を上げると、木目調のドアへと近づき、私の方を振り返った。
「では早速、始めるか。お前の演技に期待している。」