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汚されたリクルートスーツ
第1章 プロローグ

「ブーッ」
リクルートスーツの内ポケットでスマホが鳴る。瞬間的に手が動く。手にとったスマホをみる前に一呼吸おき、画面を開ける。
「第2次面接の結果について…」
そのタイトルを見て、真由はそっとポケットにスマホを戻す。ここ3か月で何度もみたメッセージ。お祈りメール。最近はメールのタイトルで結果がわかるようになった。
「今回は、いけたと思ったんだけどな…」
自然と涙があふれてくる。
子供の頃からの夢だった、航空関係を中心に受けてきたが昨今の新型ウイルスによる旅行業界の不況からどこも採用を絞っており、不採用が続いた。他業界も拡げて選考を受ける頃にはどの会社も採用を終えており、内定の出ない日々が続いた。
9月にもなると数か月前、街に溢れていたリクルートスーツもほとんど見かけなくなった。
この時期に、この恰好をして歩いているとより惨めさが増してくる。
真由は逃げるように家までの電車に飛び込んだ。

