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狂愛の巣窟 〜crossing of love〜
第7章 【あなただけのモノになれたら幸せなのです…】





「ん、タクシー来た」




「俺だけ帰るんすか?」




さっきまで可愛く“僕”って言ってたのに。
最初はキス止まりよ。
簡単に堕とすけど簡単には与えないの。




「一緒が良い」って困った事も言うのね。
「困らせたくないんじゃなかった?」って言うとションボリ。
我に返ったみたい。
フラフラしてるから乗り口まで支える。
全然乗ってくれないじゃない。
あ、違うか、開いた後部ドアの前でこっちに向かうキミは。




「次も絶対会えますよね?」




「ん?うん」




「ブチったりしませんよね?新しい店にも来てくれるんすよね?」




このままフェードアウトするんじゃないかって心配してる。
行くよって言っても酔ってて信じてくれない。
酔うとこんな一面もあるんだね。




「ほら、早く乗って」




「イヤだ」




頑なに乗ろうとしないから運転手さんもチラホラ見てる。
一緒には乗れないのに、もう。
そんなすぐには与えないと決めておきながら酔った勢いだと理由付けて、服を掴んで引き寄せ私から我儘言う口を塞いであげた。
ほんの一瞬だけ、黙らせる為に。




「嘘じゃないから、コレで信じられる?」




「は、はい………」




「よし、ちゃんと住所言ってね?運転手さん、お願いします」




やっと素直に乗ってくれた。
見えなくなるまで手を振って見送る。
酔ってなんかいないのに。
全然シラフでスッと素に戻る自分にウケる。




「十和子…?」




背後から亨さんの声がしてハッとなり振り向いた。
お仕事だったんじゃ…?
そうね、何もかもわかってるわよね。
きっと亨さんも願懸けして此処へ迎えに来たんじゃないかしら。
だってホッとしてるもの。




「遅いから迎えに来た」




私がお願いして把握してもらっているのに。
GPSで此処まで辿り着いた。
どこから見てた…?
最初から…?
キスしたのも全部…?
どこからでも良い。
早くこの場から連れ去って。




「ごめんなさい、遅くなって」




「車、こっちに停めてあるから来て」




素っ気ない態度。
わかってます、怒ってらっしゃることくらい。
いつもは傍まで来てバック持ってくれて背中に手が回るのに。
冷たい背中にゾクゾクしてしまう私は本当救いようがない。








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