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狂愛の巣窟 〜crossing of love〜
第7章 【あなただけのモノになれたら幸せなのです…】





どうしてこんなことを言い始めるのかはあなた自身で気付いてね。




「だからこの手で壊したくない……あなたとの関係性が変わってしまえば、もう私を褒めてくれるほどの美容師さんに切ってもらえなくなる……私ね、あなたの手が好き……魔法の手ね、ハサミを滑らせれば私をどんどん綺麗にしてくれる……あ、また夫に気付かれて似合うよって言ってもらえるなって」




そう話しながら手に触れてしまう私も酔っていることにする。
見上げてくれてる視線と重なって微笑むの。




「だから……時々弱る私の隙間に入って来ないで…?困るの、あなたと関わらない人生は選びたくない、あなたが綺麗にしてくれなきゃ、夫に褒めてもらえないわ」




その手を再び髪に触れさせたら起き上がる。
目線が近くになって気付いた時にはもう遅いのよね。




「じゃ、僕の独り言も聞いてください………ずっと片想いしていました、お客様なんだってずっと言い聞かせて……来るたびに、予約が入るたびに胸踊らせてありがとうって言ってもらえるたびに好きになってました……ご結婚されてることは重々承知です、どうしたら良いかわかんないです、このまま引き下がってもどんどん好きになるのは目に見えてる、今も……抑えきれそうにないです、すみません、困らせたくないのに」




あぁ、もう随分と前から堕ちてたんだね。
どのタイミングかはわからないけど、刺さってたんだね割りと深く。
長い時間かけて撒いていたの。
ようやく回収時なのかなって。




「あなたなら他に良い人がたくさん居るわ、自ら苦しい道を選ばないで」




「無理でした………だからどうしたら良いかわからない、佐倉さんの事しか考えられないとしたら?」




あ…………ダメだ、顔が近付いてきた。
逃げれる……?ここは交わさないと。
顔を引いた。
距離が出来た分、後頭部から引き寄せられ一瞬だけ、唇が重なる。
身体を押して拒んだ。




「ダメ………酔ったせいにするの?」




「酔ってないです、もう」




「嘘………フラフラしてるじゃない」




「ごめんなさい」




そう言ってあなたはもう一度重ねてきた。
さすがと言うべきか、テクニックだけはある。
モテる人生だろうに、何で茨の道を選ぶかな。
舌が入ってくる前に理性を働かせた。








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