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狂愛の巣窟 〜crossing of love〜
第8章 【戻れないのなら一緒に乗り越えてください…】





「十和子、さん」




「はい」




そんな嬉しそうに連呼しないで。
途中で立ち寄ったドライブスルーでカフェラテを買い、再びドライブデート。
お互いのことを話して新鮮だったし、キミをより知る事が出来た。




「不思議です、今、こうしてあなたと此処に居る事が」




車を停めて砂浜に出た。
ヒールを脱いで裸足で海沿いを歩く。
お昼過ぎから落ち合ってもう夕方に差し掛かっている。
もう戻らなきゃ……という時間帯。
ちょっと遠出しちゃったけどたまには良いな。
広々として開放感。
窮屈な毎日に少しでも癒されて欲しくて。




「名前で呼んでくれないの?せっかく教えたのに」




「……………十和子さん」




呼び慣れてないからいちいち赤くなってる。




「あ、そうだ、大事なこと聞いてなかったけど………航平くんは居るの?彼女」




「居ません」




「そっか、居たら連れ回しちゃった事彼女さんに悪いな、と思って」




「僕も今、楽しいですから気にしないでください」




エイっ!と海水を掬って掛ける。
「冷たっ」て笑ってくれるキミはオレンジ色に染まってて、付き合う前の一番楽しい時間を共有出来て私も心が潤った。




タオルで拭きながら車へ戻る時。




「十和子さんは……居るんですよね、お付き合いしてる人」




そう核心を突いてくるのは指輪を見てるから。
ちゃんと嵌めている。
亨さんとの結婚指輪、そして、一颯くんから貰ったピアスも。




「お付き合いしてる人は居ないよ」




「えっ!?」と一瞬喜ばせておいて、一瞬のうちに打ち砕く。




「結婚………は、してる」




「え…………あ、そう……なんですね」




明らかに落胆した顔。
最初に謝っておく。
此処まで連れて来て悪いのは充分わかっているけど。
キミを誘わずには居られなかった。
悪い癖なの。
新たな蜜を欲してしまう。
まるで、私はあの食虫植物みたい。
テリトリーに来たらすぐに食べちゃう。




「安心して?ちゃんと送り届けるし何もない、キミと私との間には」




「どうして………誘ってくれたんですか?僕じゃなかっても良かったですか?」




白いTシャツが風で揺れてる。
綺麗な茶髪も同じ方向に揺れてて。









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