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北の軍服を着た天使
第2章 Episode 2
双方の利益に繋がる良い話をしてくれたウーファ株式会社の日本支社は西天満の少し古いビルに入っているようだった。この近くは飲み屋街もあれば、アメリカ大使館もあるし、結構栄えている所だ。
「スタートレントビル…あ、ここか。」
グーグルマップと照らし合わせながらタイムズパーキングから少し歩いた所で、目的地に到着しました。とナビが強制的に終了する。
見上げたビルは…美容整形外科や広告会社等、他に四社ほど入っている一般的な物。それの一番上に取引先の会社があるらしい。
スマートウォッチを見ると、既に時刻は17時30分前。…せめて誰かが社内に居る事を願って、エレベーターで5階まで上がると李さんのメガネケースと道中で買った菓子寄りを、持ってきた可愛らしい小さな紙袋の中に入れた。
───ピンポーン
と云う機械的な音が静かな廊下に響く。隣はファイアル広告会社という会社らしい。立地的にも名前的にも、外国人の人が経営しているのかもしれない。
「……はい。」
古いビルには似合わないほどの最新物のインターホン。そして、5階の廊下に設置された沢山の監視カメラ……静かでどこか薄暗いこの雰囲気とは対照的に映る、このセキュリティの高さ。そんなどこか異様な雰囲気に目を取られながら、インターホンから聞こえてきた声に返事をした。
「お疲れ様です。私、スターロード株式会社の流川リサと申します。本日、会社にて取引についてのお話をさせて貰ったのですが、李さんがその際にメガネケースを忘れていきまして…」
「あー、今開けます。」
このイントネーションは多分…李さん本人かな。何故か袋を持つ手にギュッと力が入る。……すると間もなくしてロックを外したような音が微かに聞こえると、その後直ぐにドアが開いた。
「すみません、流川さん。」
「あ、李さん!これどうぞ」
ネクタイを外し、ジャケットを脱いでいた李さんは最初に見た時よりもカジュアルになっていた。
「わざわざすみませんでした…。もし良かったら中でコーヒーでもいかがですか?」
「いえいえ、営業時間外でしょうしそんなの申し訳無いですよ。」
「わざわざ届けてくれた御礼です。何か後に用事が詰まっていないのでしたら、是非コーヒーくらい飲んでいって下さい。……ドリップコーヒー、お好きですよね?」
「あ、はい…!では、お言葉に甘えて…!」