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北の軍服を着た天使
第2章 Episode 2
李さんに案内された事務所の社内はビルの外観からは想像も出来ない位、キレイに片付けられていた。壁は真っ白で、大きな窓には見るからに高級そうな刺繍の入ったワインレッド色のカーテンがかけられている。
来客用のソファーに掛けるように言われると、ウチとは真逆の雰囲気を目に焼き付けるようにくるくると辺りを見回した。
「どうかしましたか?」
「あ、すみません…いや、とてもキレイになさってるなと思いまして」
「あー、有難うございます。代表の趣味ですよ。」
私の座るソファーと目の前に有る李さんが座るであろうソファーを囲むようにして、両サイドには木製のサイドテーブルが4つ置いてある。
そのサイドテーブルの上には、少しレトロだけどセンスの良いライトが置かれていた。
パソコンや電話が置いている私から見て左側に在る細長いデスクは、綺麗にコーティングされた木製の物。きっと代表はここに座って他所に電話したり、資料を見たりしているんだろう。
この事務所一面に敷かれているペルシャ絨毯のように綺麗に刺繍されたカーペットとは対照的なシンプルで少しだけ腰の低いテーブルの上に、ピカピカに掃除されてある高そうなガラス製の灰皿を見つけて、流石中国だな、なんて思った。日本では禁煙ブームに火がついているけれど、中国や韓国では未だに喫煙者が多いのだ。
「お待たせしました、どうぞ。コロンビア産の物を使いましたので少し渋みがあるかもしれませんが。」
「うわ…良い香りですね。有難うございます」
白色のティファニーのロゴが入っているコーヒーカップを手に取り、失礼を承知しながらズズッと音を立ててコーヒーを飲んだ。……うん、文句無しに美味しい。
「美味しいです。」
「それは良かったです。」
「リサさんはあの会社に勤めて、もう随分と長いのですか?」
「そうですね、もう十年になります。」
「日本では大体、性別問わずに18歳位から働き出すのでしょうか?」
「いや、それは人に寄りますよ。」
李さんも私の前に座ると、優雅な手つきでコーヒーカップを手に取った。灰皿を真ん中にズラして、どうぞ、と手をかざしてくれる。
そんなに私ってタバコ臭いのかな?なんて少し不安に思いながら、喫煙者と云う事実がバレた事に驚きつつ苦笑いで頭を下げた。