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北の軍服を着た天使
第2章 Episode 2
『祖国である中国の事、どう思いますか?』
なんて云う野暮な質問はしない。
でも……そんな質問を、ちょっと投げかけてみたい気持ちになるくらい、李さんのさっきの一言には重みがあった。まるで資本主義国家と共産主義国家の違いを、身を持って体験したというか…痛いほどに知り尽くしているというか…。
だからこそ、これ以上は私ごとき人間が口を出すべき事では無いだろう。
第一深い仲になった韓国人の彼氏との間でさえ、慰安婦やら徴用工やら色々な話題を話せば話すほど大喧嘩に発展していく位、歴史も経済思考も宗教もナーバスな話題なのに、取引先の人にそんな事を聞くなんてただのバカがする事だ。
即座にそう判断してからは、特に何も話すこと無くただひたすらにカーテンの隙間から見える景色を楽しみながら、珈琲を飲む。
───まるで、このウーファ株式会社との取引が今後の私の人生にどう関係するかなんて…何も知らないかのように。