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北の軍服を着た天使
第2章 Episode 2
「大学や専門学校に行く子も居ますから、働き出す時期は人によってバラバラですよ。20歳の人もいれば、22歳の人も居ますし」
「へえ…」
「それが資本主義の良い所であり、悪い所でも或るのかもしれませんね。確かに、長い間無職として存在することも可能ですから。」
要は、働くか働かないかはその人の気持ち次第という部分だ。私は、早く働いて自立したいと思っていたから高卒で直ぐにスターロードに入社した。もちろん、スターロードで終わりたくないと云う野心もあるから、この10年の間に通関士や貿易事務の資格も取った。
実務も兼ねているから、社長や他の人達だって私が資格の勉強をしていると言えば全力で応援してくれていたのを今でもたまに思い出す。
「李さんはなぜ、日本に?」
「答えは簡単な物ですよ。収入口は沢山有る方が良いでしょう?」
「なるほど…。」
「日本語は?とてもお上手ですけど…」
「学校で習ったんです。こう見えても外国語全般を専攻していましたので英語も堪能に話せます。」
「へえ…多才ですね。」
「そうですね。多才な方かもしれません。」
どこか遠い目をしながら、そう呟いた李さんの瞳に色の無い、まるで真珠のような部分を見た。何て言うんだろう…寂しそうな目と言えば、寂しそうな目だし、キラキラしていないと云うのが一番しっくりとくる言葉かもしれない。
「資本主義…か。」
「え?」
「いや、日本に来たのは初めてなんですけど。日本の経済を勉強しなきゃなと思いまして」
「はは、今では中国も資本主義の部分があるでしょ?」
「いやいや。日本と中国は全然違いますよ」
「へえ…。」