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I‘m yours forever
第4章 美月は何も知らなかった 前編


正午間近となった午前11時過ぎ。
私が起床すると、彼は既にリビングルームでコーヒーを飲んでいた。その表情は、胸のつかえが取れたかのような、澄み切ったようなもので、私の存在に気がつくと「おはよう」と爽やかに挨拶をしてくれた。


単に熟睡して疲労が取れたのもあるが、恐らく私があの事を問い質す事は無いと確信して安堵したのだろう。


有耶無耶にされたままで終わってしまったが、追い詰めた結果、埋められぬ夫婦の溝となってしまうのも恐怖だった。


「おはようございます。」


私も彼の挨拶に穏やかに返答する。


彼の言う通り、忘れるしかないだろう。


それが円満な夫婦生活を送る秘訣なのだ、そう思い込むしかなかった。






それから更に2時間が過ぎた午後1時。
酷く泥酔した三原先生から電話がかかってきた。飲み会の記憶が抜け落ち、家まで私が一人運んできたと思ってしまったらしい。


「黎一さんが介抱して下さいましたよ」と一言伝えると、「え...嘘でしょ?何も覚えてないんだけど...え、どういう事?」と電話口で慌てたような三原先生の声が返ってきた。


昨晩の事の顛末を詳しく伝えた瞬間、「嘘、嘘、嘘でしょ?!全然思い出せない!何で彼におんぶされた事思い出せないの?!思い出せー!!私、思い出せー!!」と、最早呪文のように唱えていたが、やがて嘆息を漏らすと、「...月曜日、日比谷教頭にお礼の手紙を添えたお菓子を渡そうと思う...ありがとう...」と酷く落胆した声で私に告げ、電話を切った。


....思い出せなかったんだろうな...。
ドンマイ、三原先生。


彼女の事を残念に思いながら、その頭の片隅で「酒は飲んでも飲まれるな。」という酒の飲み過ぎを戒める名言を思い出す。


私もお酒...気をつけよう。


酒は百薬の長とか言うけど、適量で済ませられなくなって皆、アル中になるんだから。


三原先生の失態を間近で見てしまった私は、酒の怖さを改めて思い知る事となったのだった。



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