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濡花 ~義理の父親に堕とされていく若妻~
第33章 花怜と涼華 ~序章~
花怜も良子も父子のやり取りを黙って聞いていた。

孝一は10月末ぎりぎりまで赴任先で仕事をすること。
花怜には一週間前くらいからマンションに戻って元の生活の準備をして、送る荷物の受け取りなどをして欲しいとのことだった。

孝一が話し終えると良子が口を開いた。

「よかったわね…花怜さん……」

「ありがとうございます……お義母さん……」

卓司は息子に対して嫌味のひとつも言ってやろうとしたが、良子にああ言われては黙っておく他なかった。

その夜は久しぶりの4人での夕食だった。
卓司と花怜の心境はやはり複雑だったが、良子と孝一が食卓を囲む雰囲気を穏やかで楽しいものにしてくれた。

当然、その夜花怜は孝一と一緒に眠った。
夫に求められることもなく、義父が来ることもない、気疲れからかすぐに眠ることができた。

次の日の朝食を済ませると孝一は単身赴任先に向かう。
花怜はキッチンで義母と後片づけをしながら問いかけた。

「お義母さん…病気のこと…まだ孝一さんに言わないんですか?……」

根治したとはいえ黙っていていいとは花怜には思えなかった。

良子は穏やかに話し出した。

「あのね…来月手術から半年の検査入院があるの…。花怜さんがここを去る少し前になるのかな…。医者は十中八九問題ないって言ってくれてるから…それが終わったらちゃんと孝一に話すから…もう少しだけ黙っててくれない?…お願い……」

義母にしてみれば、単身赴任の終わる1ヶ月はまた忙しいくなる…それを自分のことで煩わしたくないと思ってるのだろう。

花怜は了承するしかないかった。
義母がこの話しはおしまい…そんな笑顔を浮かべると、孝一が身支度を整え居間に顔を出した。

「母さん…そろそろ出るよ…もう少し花怜のことよろしく頼むよ…」

「うん…孝一も無理しないでね…」

花怜はこの母子の会話にチクリと胸を痛ませていた。

駅の改札で夫を見送った花怜は義父の待つ車に戻っていく。

【ここでの生活ももう少しで終わるんだ……】

「お待たせしました……」

「あぁ…戻ろうか…」

「お義父さんはあっさりしてるんですね……」

「父親と息子なんてこんなもんだよ…ましてやまた花怜となかなか会えなくなるんだからな…」

義父の言葉に花怜も寂しいと正直思っていた。
それでもこんなに近くに義父がいる…まだどこかピンと来ていなかった。
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