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病愛狂想曲 ~ヤンデレ・カプリシオ~
第1章 執事 × 令嬢
「……お嬢様、いかがなさいました?」
背後からの聞き慣れた声に、涼華は我に返ってそちらを向いた。
窓辺の椅子に腰掛けてぼんやりと考え事をしていただけだから、大した事ではない。
「ええ、ちょっとね……」
伏し目がちな、寂しげに憂えた表情。
その表情は、執事の千藤にとってはなんともやるせない物だった。
「……旦那様と奥様の事を、お考えだったのですね?」
「…………」
図星だ。しかし、これもまたいつもの事である。
涼華の父親は、多くの企業や商社を傘下に置く紫峰院グループの最高権力者。自ら最前線に立って仕事を行うのをモットーとした人物で、年に数えるほどしか帰って来れないほど多忙な日々を送っている。
同じく母親は、世界的に有名なジュエリーデザイナーだ。原石の買い付け、研磨と商品の製作、販売店舗の配置まで総合的にプロデュースしており、世界中を飛び回っている。今も日本以外の異国の地に居るらしい。
「……自分の中では分かっているつもりなの」
俯きながら、涼華は言う。
「お父様もお母様も忙しい身の上だから、帰って来るのは難しいって……」
「お嬢様……」
「それでも、寂しくて切なくて、泣きたくなる時だってあるわ。家族なのに、どうして離れていなければならないのって、思わずにはいられなくて……」
「…………」
項垂れた華奢な背中を、ただ黙って見詰める千藤。
背後からの聞き慣れた声に、涼華は我に返ってそちらを向いた。
窓辺の椅子に腰掛けてぼんやりと考え事をしていただけだから、大した事ではない。
「ええ、ちょっとね……」
伏し目がちな、寂しげに憂えた表情。
その表情は、執事の千藤にとってはなんともやるせない物だった。
「……旦那様と奥様の事を、お考えだったのですね?」
「…………」
図星だ。しかし、これもまたいつもの事である。
涼華の父親は、多くの企業や商社を傘下に置く紫峰院グループの最高権力者。自ら最前線に立って仕事を行うのをモットーとした人物で、年に数えるほどしか帰って来れないほど多忙な日々を送っている。
同じく母親は、世界的に有名なジュエリーデザイナーだ。原石の買い付け、研磨と商品の製作、販売店舗の配置まで総合的にプロデュースしており、世界中を飛び回っている。今も日本以外の異国の地に居るらしい。
「……自分の中では分かっているつもりなの」
俯きながら、涼華は言う。
「お父様もお母様も忙しい身の上だから、帰って来るのは難しいって……」
「お嬢様……」
「それでも、寂しくて切なくて、泣きたくなる時だってあるわ。家族なのに、どうして離れていなければならないのって、思わずにはいられなくて……」
「…………」
項垂れた華奢な背中を、ただ黙って見詰める千藤。