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欲灯
第7章 秘密女
「来週の土曜は・・・・・・会えるの?」

ボクサーパンツ1枚の啓介がソファに座り直し、タバコを咥え、蛍光色のガスライターを手にした。

「うん、雨が降らなければ・・・・・・会えるよ」

「そうだよね」

「うん、ごめんね」

「いや、いいっていいって、大丈夫、オールオッケー」

「ありがとう。・・・・・・あ、そう言えば・・・・・・」

ベッドからバスローブを羽織った遥がバッグの方へ急いだ。



啓介は、遥の体に微かに残った『キヨマサ』の跡に気付いたが、何故か聞いてはいけないような距離を感じ、口を噤んだ。



「はい、これ・・・・・・」

バッグの中から取り出した、林檎の絵が模られたジッポライターを啓介に渡した。



「え!? これ俺の・・・・・・どこにあったぁ!?」



「前回会った時に、偶然私のバッグに落ちて入っちゃってたみたい」

一瞬、啓介は訝しげな表情をするが、すぐに笑顔に直った。

「そっか、よかったぁ・・・・・・。いや、失くしたのかと思ってさ・・・・・・泣きそうになってたんだよぉ・・・・・・」

「もう、気をつけてよ? ねっ」

遥が意味深な目を向けると、啓介は視線を逸らした。

「うん、ホントごめん! ああ良かったぁ・・・・・・遥からのプレゼント、見つからなかったらホント・・・・・・。ああ良かったぁ・・・・・・」

そう言って啓介は、慣れた手付きで火を点けた。



『シュボ・・・・・・』

二人を包むように優しい光が広がり、オイルの匂いが立つ。



「おかえり・・・・・・」



「綺麗ね・・・・・・」

「うん、遥と俺の、愛の炎って感じ?」

「え・・・欲望の炎って感じじゃない?」

「なにそれ」

「啓介くん、エッチだから」

「遥もエッチだろぉ?」

「え、ダメぇ?」

「ううん、ダメじゃない」





欲望という名の灯が

ゆらゆらと赤く

熱く

二人を照らし続けた。





(了)
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