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鬼の哭く沼
第3章 九泉楼

その背徳感が余計に、より強く快楽を感じる材料になるとも知らずに。


「ああ、きついな…。香夜のここに、指が喰われてしまいそうだ」

「あっ、んん…やあ、あ…」


感嘆と、熱のこもった吐息混じりの声が耳朶に響くとぞわりと肌が粟立つ。掠れた須王の声は酷く艶っぽく、情欲が色濃く滲んでいる。


「んあ…っ」

「欲しいのか?中がひくひくしている」

「ちが…っ、ああっ」


きゅう、と腹の奥が締め付けられるような感覚。喘いで身震いすると、須王が低く笑った。
指は初め、狭い肉壁を焦らす様にゆっくりと香夜の中を出入りする。だが溢れる蜜を潤滑油にして次第に早さを増していく。


「すっかり蕩けて、まるで桃の様に瑞々しく甘い香りがする」

「あ…っ、や、やあ…!はげし…っ」

「聞えるか、お前の蜜の音だ。俺の指に喰らいついて離さない、淫らな下の口が涎を垂らして悦んでいる…」


蜜壷に埋まった、節くれ立った須王の指が内壁を掻き混ぜる。激しく肉襞を擦り上げる指の刺激に、香夜は魚のように跳ねて悶える事しか出来ない。
全身が熱い。頭も、触れられている秘部も全部が溶けてしまいそうだ。ぐちゅぐちゅと響く水音は大きくなるばかりで、垂れた蜜液が太股を伝って床へと滴り落ちていく。
前から与え続けられる強い刺激に、腰を逃がそうと身体を小さく丸めれば自然と須王へ腰を突き出す体勢になる。その香夜の腰に、布越しにも分かる大きく硬いものが当たった。


「あっ……」


正体に気付いてびくっと香夜の身体が震える。昨夜目にした、須王の雄の象徴。凶悪な程に逞しい熱の塊を思い出して、怯えた。
そんな香夜を宥めるように、須王の手がそっと肩を撫でた。そのまま掌を滑らせ、乱れて背を覆っていただけの襦袢をしゅるっと床に滑り落とす。露わになった華奢な項から背へ、いくつも熱い唇が落とされる。


「怯えるな……というのは無理かもしれん。だが、お前を無為に傷つけようとは思っていない」


こつん、と額を香夜の背に当てて須王が囁く。


「俺はどうかしてしまったのかもしれんな。お前のこの香には、どうにも弱い」


自嘲するように、声が低く笑う。呟きは、香夜にというより須王の独り言のように聞えた。


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