この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
ある冬の日の病室
第6章 天使が舞い降りた
 いよいよ明日退院。おかしな言い方になるが、何だか心が重くて苦しい。里奈は僕の前には現れない。病院や里奈自身の都合もあるのだろう。里奈は僕専属の看護師なんかではない。
 昼食と食べている時。くそババぁから電話があった。入院費を僕の銀行口座に送金したという電話だった。高額な入院費、残念ながら僕のバイト代だけでは賄うことができない。「ありがたいと思え」とくそババぁが言ったので「うるせぇ、くそババぁ」と悪態をついてしまった。いつものやり取り、もちろん後悔などしていない。
 退院を前にして、僕は病院を歩き回った。どこかに里奈がいるのではないか、という淡い期待を抱いて里奈を探した。足立看護師には会ったが里奈には会うことができなかった。まぁそれは当たり前で、確か里奈は今週夜勤だと言っていた。
 夕食が済むとすぐに消灯時間がやって来た。「はぁ」と、僕は大きくため息を一つついて眠りに世界に潜り込んだ。
 額に冷たいものを感じて目を開けると、里奈が僕の顔を覗き込みながら額を触っていた。
「熱も無し、いよいよ退院ね」
「……」
 里奈が天使に見えた。天使に返す言葉が見つからない。甘い香り……を探す。息を大きく吸い込むと、僕の探していた匂いが鼻孔を通って来た。
「なんだか寂しくなるわ、翔君がいなくなると」
「あの……やっぱりダメですか? 里奈さんに会いに来るのは」
「ダメよ」
「やばいくらい里奈さんのことが好きなんです」
「ふふふ、やばいくらいって。今の若い人はそんな風に言うの?」
「……わかりません。人の告白なんか聞いたことがないですから」
「そうよね、ごめんなさいね」
「全然」
「おばさんには、若い人たちのコミュニケーションの取り方にはついていけないわ」
「里奈さんは、おばさんなんかじゃないです」
「ふふふ、お世辞でも嬉しいわ」
「お世辞じゃないですから!」
 里奈は唇に人差し指を立てた。
「大きな声を出しちゃだめよ」
「すみません」
「翔君、プレゼントがあるの。受け取ってくれる?」
「なんですか? ていうか里奈さんからのプレゼントだったら、何でもウエルカムです」
「ふふふ、ウエルカム……なの?」
「はい」
「だったら約束して」
「……」
 何を? と言いかけたが、その言葉を飲み込んだ。
「声」
「声?」
「そう、大声は絶対にダメ。わかった?」
「はい」
/28ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ