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Biastophilia💋
第1章 Biastophilia
夕方の7時。
リビングルームに足を踏み入れた彼は、私の姿を見て硬直していた。
「貴方が好きなの。結婚して。」
私はダイニングチェアから立ち上がると、直立不動のままでいる彼に抱きつき、背中に腕を回した。
「明美と...香奈子は何処だ?」
震える声で男はそう言った。
私の告白なんてまるで無かったかのように、そう言った。
酷く傷ついた。
「誰?知らないわ。私が来た時は無人だったわよ。」と素っ気なく言い放った。
血の気が引いていく彼の顔を見ても、私の心は全く痛まなかった。
でも返事が返って来ない事の方が嫌だったから、もう一度同じ告白をしたの。
そうしたら、「ふざけるな。」って返ってきた。
やっと返事が貰えたと思ったら、怒られたの。
だから理由を問い詰めたの。
すると、「お前こそどういうつもりで僕の目の前に現れた?復讐のつもりか?」と。
「私の愛情表現の1つよ」
そう答えたら、訝しむような瞳で私を睨みつけた後に、妻子と思われる名前を呼び続けて私から背を向けた。
「やっぱり殺して。目障りだから。」
私の純情を弄んだ奴なんて
要らないわ。
私の出した指示通りに、押し入れに隠れていた殺人代行者である彼らに、1言そう告げた。
運命の人だと思っていた男が抵抗も虚しく、簡単に床に組み伏せられていく。
「大好きな奥さんと子供が居る場所に行けて良かったじゃない。お幸せに。」
目を見開いた男が何かを言い返す前に、サバイバルナイフが彼の心臓に突き立てられた。
私って優しい人間ね。
初恋も人生も何もかも全て終わったというのに、
拷問もかけずに愛した男が欲する場所に
簡単に連れて行ってあげるんだから。
そう思いながら、私は男が死にゆく姿を最後まで見つめていた。