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第1章 講師の愛娘

私の通う絵画教室が人気なのは、隔月1回裸婦クロッキーがあるからだ。その証拠にほとんどが男性で、40代後半から定年後かなり経っていると思われる年齢の受講者で計30名ほど所属している。
私は中でも若いほうだが、かれこれ3年ほどお世話になっている。

会場はコミュニティ施設の一室。週1回ここを借りて教室が開催されている。
この施設は他にも様々な団体が稽古事などに利用している。

8月末、今日は裸婦クロッキーの日で通常の授業より多くの受講者が来ていた。

「隔月じゃなくて毎月やってほしいよな。」

「本当に待ち遠しいよ。」

幽霊受講者たちもこの日だけは顔を出す。

しかしこの日は意外な出来事が起きた。

「皆様、大変申し訳ないのですが……。」

この教室を主宰する講師が慌てた様子で受講者たちに告げた。聞くと専属で毎回来てくれているモデルの洋子さんが急病とのことで来れなくなってしまったとのことだった。

「ええっ！洋子さん来れないの？」

「モデルが不在じゃ話にならないぞ。」

「おいおい、困るよ先生…。」

ざわつく受講者たち。無理もない、この裸婦クロッキー会は月謝とは別途料金を徴収している。この日のために遠くからわざわざ来ている者もいる。

「いま代わりのモデルを当たっているので…。」

携帯電話で方々に連絡する講師。


「代わりは見つかりそうですか？」

「いえ…さ、最後にもう一軒当たってみます…。」

教室から廊下に出て連絡するようだ。
開始時間も迫り講師の焦燥感が伝わる。