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臨時ヌードモデル ~梨果14歳の一年~
第29章 性欲と学業と夢見る少女
ピアノ伴奏から始まり美月はゆっくりフルートを構えてメロディーを奏で始める。
一瞬で鳥肌がたった。ゆったりとしたメロディーを丁寧に吹く。小さな胸から想像できないような長い長いロングトーン。テクニックに走る訳でもなく一つ一つの音符を確実に奏でる。
家に遊びに来ても全く吹くことはなく、唯一美月の演奏を聴いたのは友也と奏音にお祝いで演奏した“ホールニューワールド”だけだった。

タイスの瞑想曲のゆったりと長いメロディーを息継ぎを感じさせないほど滑らかに吹く。美月の演奏は他を寄せ付けぬほど別格だった。自然と涙がこぼれた。

盛大なスタンディングオベイション。ドレスを着た美月は深々とお辞儀をしてステージ下手にはけていった。

ホールの外に出ても私と友也は無言だった。

「スポーツ馬鹿の俺でも美月さんの演奏の凄さが解ったよ。」

「うん。無性にお金払いたい。あれが無料なんて有り得ない。」


ピコン♪

友也の携帯電話から音がした。

「やべ、マナーモードにしてなかった!」

「おいおい…。良かったな、演奏中に鳴らなくて。」

「奏音からメールだ。正門で待っててって。これからウチで打ち上げだってさ。」

「おっ!いつの間に彼女を呼び捨てかい?…って家で打ち上げって何でそんなこと勝手に決まってるの?」

「まぁまぁ。」

「友也はいつも“まぁまぁ”(声真似)しか言わないじゃないか。少しは彼女たちにも…。」

「おじさん、お待たせー。なに友也くんに怒ってるの?」

「梨果!何で家で打ち上げって…。」

「お父様おじゃましまーす。」

「あ、奏音さん、今日は家にはあいにく食材が無くて…。」

「おじちゃん、打ち上げ楽しみだねっ。」

制服に着替えた美月がそこにいた。

「み、美月さんっ!是非いらしてください。食材など私めがいくらでも買ってきます!」

「ちょっとー、今までと美月の扱い違くない?」

「いやいや、何をおっしゃる梨果さん。私は美月さんはそんじょそこらのガキとは違うと前から思っていたんだよ。」

「わーい、おじちゃん大好きー!」

「こらー美月!おじさんにくっつくな!」

美月が腕に抱きついてきた。小さな小さな胸が当たる。見た目は本当にガキンチョだ。

(本当にこの子がさっきのフルート奏者と同一人物なのか?)
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