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臨時ヌードモデル ~梨果14歳の一年~
第55章 古川賞授賞式
翌月、京都の鈴善呉服店から梨果の振り袖が届いた。古川英二文学賞授賞式を一週間後に控えた日だった。

「ええっ、わざわざ京都から社用車でいらしてくれたんですか?」

「ええ、お得意様のお宅へは宅配業者には依頼せず自社でお届けしています。」

「いやーお得意様どころかむしろ私は一見さんなんですけど…。」

「松乃様のご紹介とのことで当代七代目が直接届けると言って聞かなかったのですが社用があるのでなんとか引き止めて代わりに私が参った次第です。」

(あの当主は梨果に会いたかっただけだろう…。)

「それで七代目から言付けが…。」

「なんでしょう?」

「“また今度ねをオバケにしないでね”とのことです。どういう意味かはわかりかねますが…。」

「…大丈夫です、理解しました。」

(梨果のおっぱいが見たいという意味ね…。)


「うわっ!木箱に入ってるんだ。箱だけで高そう…。」

玄関に持ち込まれた荷物の外装だけで驚く友也。

「桐箱だね。梨果、開けてみて。」

「う、うん。」

梨果が桐箱の紐を解き蓋を開けた。

「おおっ…なんか凄そうだけど俺が思ってたイメージと違う。」

「あぁ、成人式なんかで見る振り袖をイメージすると違うかもね。」

「そうそう、ああいうのを想像してた。」

「派手さはないけど華やかさがあるんだよ。」

「ん??」

首を傾げる友也。

「梨果が着た姿を見れば言った意味が理解できると思うよ。」

「そうなんだ。楽しみだね。」

「お着物にお間違いは無かったでしょうか。」

呉服店の社員が訊ねる。

「はい、間違いありません。遠くからありがとうございました。」

しっかり受け答えて深々と頭を下げる梨果。

「では良い晴れの日を。それではこれで失礼いたします。」

鈴善呉服店の社員は去っていった。

「着物が届いても着付けしてくれる人がいないと試着できないね。」

「確かに…。でも嬉しい。おじさんありがとう!」

「父さん、これいくらしたの…?」

友也がこっそり聞いてきた。

「賞金を貰う前に約半分を使ってしまったよ、あははは…。」

梨果に聞こえないよう友也の問いに答えた。

「ええっ?!!」

「どうしたの?友也くん。」

「え?!いやなんでもないよ…。」

プルルルルルルルル♪

携帯電話に着信が入った。
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