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臨時ヌードモデル ~梨果14歳の一年~
第11章 ヌードモデルの選択
駅から直接バスでコミュニティーセンターに向かった。

9月も後半だが残暑が厳しい。ジャケットを手に持って施設に入る。

先月梨果が裸体を晒した教室。あれ以来なので記憶が蘇る。

「こんにちは。」

教室に入り梨果の父親である講師に挨拶をした。

「やぁ、久し振りだね。」

「ちょっと仕事の関係で…。」

「そうでしたか。まぁ好きな場所に用意して。今日は胸像画です。」

教室中央に用意されたヴィクトル・ユーゴーの胸像。
フランスの政治家かつ“レ・ミゼラブル”の著者である。
私も少々物書きをするので彼の著書はいくつか読んでいる。

「先生どうもー。やぁ、君、久し振りに来たね。」

川瀬氏が教室にやってきた。

「こんにちは。」

「いつ以来だっけ?」

「三週間振りですね。前回の裸婦クロッキー会以来です。」

「あぁ。あの時ね。全くキミには邪魔されたよ。まぁ、あのままじゃ梨果ちゃんに帰られたかもしれんからよしとしよう。ははは。」

「すみません。」

「今日はあのヒゲの爺さんを描くのか。難しそうだな。」

田村氏も教室にやってきた。
講師と何やら話をしている。

「オーケーオーケー。それで行きましょう。良かった。良かった。」

講師にそう言いながらこちらにやってきた。

「やぁ田村さんこっちこっち。」

「おう、川瀬さんどうも。…君も久し振りだね。」

「こんにちは。」

「隣失礼しますよ。今日は胸像画か。あれはユーゴーかな。」

「ご存知なのですね。」

「貴方はどちらから?」

「本町です。」

「隣の自治会ですね。」

田村氏は話せば紳士的な人である。


梨果の裸像をクロッキー帳の最後のページに書き終えたので、今日は新しいクロッキー帳の1ページ目にユーゴー像を描いた。

「君はとても上手だね。」

田村氏が私の絵を賞賛してくれた。

「いえいえ。田村さんもお上手です。」

「いやいや。」

川瀬氏はお世辞にも上手いとは言えず、講師から度々指導を受けていた。

「休憩にしましょう。」

講師の一声で休憩に入る。

「川瀬さんちょっといい?」

田村氏は川瀬氏を呼び廊下へ出て行った。
私も何気に後を付けた。
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