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蜜愛~男になった女~
第2章 第一部【白桜記】 其の一・高嶺桜
 あの典姫の涙を、おさとの方は忘れられない。ひたすら父を恋うる幼い瞳を思うと、たとえ信頼の怒りに触れたとて、言わずにはおれない。何より、今ここで失ったとて惜しくはない我が生命なのだ。今のおさとの方に怖いものは何もない。
 その捨て身の行為に、流石の信頼も何か感じ取ったようだ。
「そなた、典姫に逢うたのか」
 信頼がおさとの方から手を放し問う。おさとの方は頷いた。
「はい、三日前に初めてお逢い致しました」
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