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第2章 第一部【白桜記】　其の一・高嶺桜

「私は女子衆のおわす奧向きのことについては何も存じませんでしたゆえ」
　おさとの方が応えるのに、信頼は頷いた。
「全く面白みのない奴だったからな。一体、この男は何を考えているかと思うたものだぞ。二十歳を超えたというのに浮いた噂の一つもなく、惚れた娘のいる風もない。よほどの女嫌いかと思うておった。何しろ、わしが女房を紹介してやろうと言うてやったら、そのようなものは一生涯要りませぬの一点張りだ」