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第3章 【白桜記】　其の三・巡る想いは

　これほどまでに酷い目に遭わされながらも、おさとの方は信頼を憎む気にはなれなかった。信頼を大切に思う気持ちは異性への愛情ではないけれど、おさとの方は彼女なりに信頼を今も主君として大事に考えているのだ。榎木聡一郎であった頃とその忠誠心は何ら変わりはない。
　信頼が咎められたり、ましてや佐伯氏が断絶の憂き目を見たりするのは絶対におさとの方の望むところではなかった。それでも、今、彼女はロザリオを外さずにはおれなかった。