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第3章 【白桜記】　其の三・巡る想いは

「大丈夫ですよ。姫様が何も怖がらなくても良いのですよ」
　おさとの方は典姫を強く抱きしめた。その様を見、信頼は暗い微笑を刻んだ。
「なるほど、やはり治部の申すとおりであったな。盛綱を蟄居させた折、治部めは盛綱の倅も共に退けよと申したのじゃ。榎木聡一郎も父親と同じ穴の狢(むじな)じゃと申しておった。聡一郎、いや、おさと。やはり、そなたまでわしを裏切っておったのか」