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蜜愛~男になった女~
第3章 【白桜記】 其の三・巡る想いは
その翌朝、一晩中降り続けた雨は嘘のように止んだ。からりと晴れ上がった空は深い蒼に染まり、涯(はて)なく続くようだった。
その日の昼下がり、おさとの方は縁に座って珍しく縫い物をしていた。縫い物と言っても着物を仕立てるわけではない。五万石の藩主の寵愛第一の側妾であるおさとの方には、呉服商が見立てた高価な生地で専門のお針子が着物を仕立てる。その点、信頼はおさとの方の打ち掛けや小袖のために金に糸目はかけなかった。