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蜜愛~男になった女~
第3章 【白桜記】 其の三・巡る想いは
おさとの方は眼を見開いた。
「姫様はそのような話をどこでお聞きになられましたの?」
「乳母が教えてくれたのです。お母様が表で活躍しておいでになられた頃、敵う者はいなかったと」
五歳の典姫がどこまで乳母の話を理解し得ているのかは判らない。確かに、おさとの方が表御殿に出仕していた榎木聡一郎時代、漢籍の素読で右に出る者は見当たらなかった。いや、それだけではなく、学問・武芸に至るまで聡一郎(おさとの方)は秀でていた。