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第4章 第二部【こぼれ桜】　其の一　始まりの桜

　その言葉に偽りはない。かつては信頼を恨んだこともあった。次代の家老としていずれ藩政を担う希望に溢れていた日々―、未来の希望をすべて奪われて絶望に打ちひしがれていた。
　出口のない暗闇の中に囚われているような心持ちがしてならなかったけれど、ある日ふと気付いたのだ。たとえ男の榎木聡一郎であろうと、側室おさとの方であろうと、主君として信頼を大切に思う気持ちは何ら変わりない、と、その時、思った。