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蜜愛~男になった女~
第5章 第二部【こぼれ桜】 其の二 水面下の計略
今、その襖の向こう側の廊下に何者かが潜んでいる。お美代が控えるのは廊下側とは反対の隣室である。おさとの方が身を強ばらせた刹那、部屋の中で衣擦れの音が止んだ。おさとの方を抱いていた信頼が手を放し、そっと上半身を床の上に起こす。不安げに見上げる愛妾に、信頼は安心させるように頷いて見せた。
―案ずるには及ばぬ。
その瞳はそう語っていた。おさとの方は頷き返し、つとめて気配を襖の向こうの相手に読まれぬように息を潜めた。
―案ずるには及ばぬ。
その瞳はそう語っていた。おさとの方は頷き返し、つとめて気配を襖の向こうの相手に読まれぬように息を潜めた。