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第5章 第二部【こぼれ桜】　其の二　水面下の計略

　信頼はたった今、入ってきたばかりのようであった。いつもは隣室の熱気と喧騒に朝までまんじりともできぬ夜が続くのに、昨夜に限って熟睡してしまったようだ。おさとの方自身、信頼の身を案ずることに疲れていたのかもしれない。
　信頼は相変わらず白の着流し一枚きりである。早朝の風景の底で見るせいか、その顔はいつもよりいっそう蒼ざめており、おさとの方は胸をつかれた。