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第5章 第二部【こぼれ桜】　其の二　水面下の計略

―殿は何とお変わりになられたのであろうか。
　今更ながら、ここ数年の信頼の心的成長に眼を瞠る想いであった。これが、あの些細なことで癇を立て家臣を無礼討ちにしていた信頼と同一人物かと疑ってしまうほどだ。
　あの頃の信頼は発作を起こしてはおらぬときでも、どこか陰鬱な陰のようなものを身にまとわりつかせていた。英明ではあったけれど、いつも何を考えているか判らぬような、不気味な得体の知れなさがあった。