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第6章 第二部【こぼれ桜】　其の三　散る桜、咲く桜　

　 そのためにも事は慎重に運ばなくてはならない。今頃、頼母は信頼が愚かにもまんまと投げた餌に食らいついてきたとほくそ笑んでいるに相違ない。実際には餌に食らいついてきたのは頼母の方なのだが―。そのことを頼母に気取られてはならいのだ。
　信頼は小さく息を吐くと、真っすぐ前方を見据えた。まるで、そこに見えない敵がいるかのような強い視線であった。