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第7章 番外編【櫻の系譜・壱～雪時雨（ゆきしぐれ）～】

　長儀子は今、河北城の奧御殿の〝御休息所〟と呼ばれる座敷にいた。ここは藩主が奧へおなりの際の御座所となる。大名の住まう城は江戸城と同様に〝表〟と〝奧〟に区別されており、藩主の正室を初めとして側室や子女、それに仕える女たちは皆、〝奧〟に住んだ。奧向きに自由に出入りできるのはもちろん、藩主信頼ただ一人である。数日後に控えた婚儀が終われば、長儀子はこの河北城の奧の女主人となるのだ。